ミニワークショップ

9月16日(金)16:30~18:30

1.システムズアプローチからみる児童虐待 -圧倒的な現実を前にして-

加来洋一(長崎こども・女性・障害者支援センター)

 児童虐待の領域では、子どもが心身の重篤な危険にさらされてきたケースが少なくない。子どもは心的外傷やアタッチメントの問題の影響で、家庭、学校での適応や対人関係に大きな困難を呈することになる。一方、システムズアプローチは家族や組織に介入するために「今、ここでの相互作用」「関係性」「言説」などを扱う認識論と技法から成り立っている。
 ワークショップではシステムズアプローチを援用した虐待を受けた児童のアセスメントについて、児童と支援者との関係性、児童との面接場面での「今、ここでの相互作用」、児童をめぐる支援者間での対話という観点から解説を試みる。参加者と共に児童虐待の領域におけるシステムズアプローチのもつ可能性について議論を深めていきたい。

2.EMDRを用いたトラウマ記憶の再処理

市井雅哉(兵庫教育大学)

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)はPTSDに有効な心理療法として推奨されている。さらに、日常的なトラウマ記憶も処理できるので、適用範囲は広い。適応的情報処理モデルが提唱されており、これは、人間の脳が元々持っている適応的に情報を変えていく処理能力を活用して、トラウマにより処理が滞ってしまった情報に対して、両側性の刺激(例えば、水平方向の眼球運動)を用いて処理を再開するというものである。前提として、クライエントの脳に適応的な情報、肯定的な記憶の存在が必要で、これが少ない場合には、準備に時間をかけることとなる。親からの虐待、不適切な養育は、随分年月の経った大人時代となっても人生に大きな影を投げかけることは周知の事実だろう。こうした対象に対して、どうアプローチするのかに焦点を当ててお話する。

3.行政におけるブリーフセラピー的立ち回り術

野坂達志(元 自治体精神保健担当監)

 小さな自治体では、相談窓口職員が保健師や社会福祉士であることは稀で、一般職員が対応することが多い。そのため疾病や障害とその対応について詳しくないということがある。特に相手が「パーソナリティ障害」や「自閉症スペクトラム」であったりすると、相談開始初期で「炎上」することもある。そうなると私が呼び出され、急遽「消火活動」を行うことになる。現場で私が行っていることは
①「見立て(相手のタイプ、望んでいること、こちらが出来ること)」
②「コミュニケーションの工夫(行動を正すより、苦労をねぎらう。共感は表情で)」
③「ストーリー変更(周囲がマイナスで語ることを、プラスで言い換える)」
④「緊急性の評価(受診・保護・自殺など。事件にさせない)」
⑤「現場職員のケア(暴言・暴力・つきまとい。カンファレンスで方針を立てる)
当日は「理論より実践」重視の話をします。教育や行政・福祉関係者の参加を希望します。

9月17日(土)15:10~17:10

4.現場で役立つ!スクールカウンセラーの研修・講演テクニック

中村経子(兵庫県スクールカウンセラースーパーバイザー)

 新任スクールカウンセラーとして着任した日、「カウンセリングマインド研修をやってもらいます」と突然告げられたのが20年前。以来、子どもと学校の先生という“世界で最も厳しい受講者”の胸を借り、マイク片手に奮闘して参りました。
 「今日の研修おもしろかった!」というご感想をいただくまで丸4年。その甲斐あって3か月で小中学校17校を回る強行スケジュールを体験。勢いで参加した中国の学会では通訳可能な日本語を話せることがなにより重要だと知り、被災地の学校では速やかに広い範囲に心のケアの知識を伝達することの大切さを痛感しました。
 そして、恐る恐る出場した第8回全国・講師オーディションでは最優秀グランプリを獲得。現在では日々の相談業務の傍ら研修・講演講師としても活動しています。
 今回のワークショップでは、受講者の興味を惹く自己紹介、印象に残る事例の伝え方など、すぐに使える研修・講演テクニックをお伝えします。

5.CRAFTを応用したひきこもりの行動論的家族支援

境泉洋(宮崎大学)

 近年、ひきこもりは若者だけではなく、全世代で生じることが明らかになっている。あらゆる世代に生じるとはいっても、ひきこもり状態には社会参加を回避しているという共通要因がある。
 ひきこもり支援の多くは家族の相談から始まることが多い。また、長期化しやすいひきこもりへの支援において、家族がひきこもり本人の心理を理解し適切な対応を行うことが重要となる。ひきこもり状態にある人の社会参加を促進する上で、特に重視しなければいけないのが正の強化である。そして、問題行動を減らすよりも、社会参加行動を促進することが重要となる。
 本ワークショップにおいては、ひきこもり支援において効果が実証されつつあるコミュニティ強化と家族訓練(CRAFT)を応用した支援を紹介する。CRAFTは行動論的家族療法に位置づけられる技法である。ひきこもり状態にある人が正の強化を体験するための手法としてCRAFTを応用した行動論的家族支援について紹介する。

6.支援する側も支援されたい、そんな「大人の発達障害」について考えてみるミニワークショップ

姜昌勲(きょうこころのクリニック)

発達障害なんて大人になってからわかるもんではないから大人の発達障害なんてない、なんて相談機関で門前払いされたなんて伝説もすっかり過去の話、いまや「大人の発達障害」はすっかり市民権を得ました。有名人のカミングアウト、小説や書籍、漫画、さては映画など、様々な媒体で発達障害をテーマにした作品をみることもできます。有病率10%とも言われる発達障害ですが、それほどありふれた疾患であるはずなのに専門機関での相談体制が充実しているとは言えないのが現状。発達障害支援センターをはじめ、公的、民間問わず「大人の発達障害」に対応可能と看板を掲げただけで相談者が殺到する現状が続いています。とりもなおさず「大人の発達障害はみれません」なんて堂々と言ってしまえる精神科や相談機関が存在する反動とも言えるでしょう。疲弊しがちな支援者も支援されたい、そんなみんなが集まって「大人の発達障害支援」について考えてみるミニワークショップです。

7.家族向けに動機づけ面接を伝える

岡嶋美代(BTCセンター東京)

 動機づけ面接とは対人援助職と当事者間での協働的な会話スタイルを保ちながら、当事者自身がもつ変化への動機とコミットメントを強めていく方法として知られている。技法が開発されたアルコール依存症の領域では、治療意欲のない当事者をどのように健康行動へと導けるかが問題となっていた。一方で、相談には家族が訪れることもあり、家族へ動機づけ面接の基本を教示することで、当事者―家族間での関係性の再構築をはかり治療意欲を高めていくことや、治療の妨げにならない対応を家族が学ぶことができる。本ワークショップでは家族向けコミュニケーション・スキル・トレーニングに特化した動機づけ面接の伝え方をまとめてみた。関係性重視のカウンセリング技法のコツは、家族訓練のみならず、さまざまな臨床でチョイ足し可能な技術でもある。エクササイズを体験していただく時間も設けたい。